カナダ留学の出願にIELTSのスコアが必要なので6月上旬にセルビアのベオグラードでIELTSを受験してきました。今回でIELTS受験は3度目ですが、海外での受験は初めてです。
日本で受験する場合と少し異なっており困った部分もあったので、ちょっと書いていきます。
この記事の概要
はじめに:旅行先でもIELTS受験できた
私の希望するカナダのカレッジのプログラム(日本の”学部”に相当)では出願時に4分野とも全て6.0以上のIELTSスコアが必要です。ただ、日本にいた時に受けていたスコアでは足りなかったので、海外のどこかでIELTSを再受験しようと思っていました。
申込むまでは「正式な在外邦人でも留学生でもなく、その国にふらっと立ち寄るだけの私でもIELTSを受験できるのか?」と少し不安だったのですが、問題なく受験できました。
今考えるとIELTS受験には「パスポート」と「結果を受取可能な住所」さえあればいいので杞憂でしたね。
余談:郵送先について
私はセルビアではゲストハウスに滞在していました。ただ、ゲストハウスで郵便物を受け取れるのか心配だったので受験前にセルビアのIELTSセンター担当者に「結果を直接受け取りに行ってもいいか」をメールで訊ねたところ「一般の人はIELTSセンターに入館できない」と返答されたので、ゲストハウスの住所を伝えてそこに郵送してもらうことにしました(申込んだ時はブルガリアでの連絡先情報を入力していたため)。
結果は無事にゲストハウスに届きました。
個人的に感じるコンピュータ方式のメリット
私はIELTSをコンピュータ方式で受験してみた後には「もう二度と筆記方式を受験したくない」と思ったほどなので、以下に個人的に感じるコンピュータ方式のメリットと、「強いて言うならば」のデメリットを挙げます。
Listening
- 数字入力が楽
- 自分で音量調整できる
- ヘッドホンで聞けるので、他の受験者の発する音に邪魔されずに済む
→筆記方式だと会場のスピーカーから聞くことになる上に、解答箇所で一斉に鉛筆の音が走って耳障り
Reading
- ページをスクロールできるので文章を追いやすい
→筆記方式だと紙の冊子なので、ページが変わると毎回ペラペラと見直すことになる - ドラッグ・アンド・ドロップで解答を入力できる問題があって楽
Writing
- 文字数が表示されるので過不足を把握できる
→筆記方式だと自分でおおまかに数える必要がある - 鉛筆よりもタイピング入力の方がはるかに速く書ける
- 文字の読みやすさを気にする必要がない
→採点者が読めない場合は採点で損する可能性がある - コピー・アンド・ペーストができるので、文章を修正しやすい
→筆記方式だと文章を追加挿入したい場合は消しゴムでわざわざ消して調整しないといけない
Speaking
- IELTS申込時に事前にSpeaking受験時間を希望・選択できる
→筆記方式だと当日に受験時間が分かるので時間の制約がつく。私はそれで5時間待ったことがあります。
Listening・Reading・Writing共通
- ずっとヘッドホンを着けて解答できるので集中できる
- 残り時間が画面に表示されているので時間を把握しやすい
- 記入済みの解答欄には色がつくので、飛ばした設問を見つけやすい
- 机に区切りがあったり、1席空いていたりするので隣の受験者の存在が気にならない
全体的
- 結果がすぐに出る
→筆記方式:2週間後、コンピュータ方式:3~5日後 - 一度に受ける受験者数が少ないので会場が混雑していない
→筆記方式:最大数百人規模、コンピュータ方式:大体20人くらい
個人的に感じるコンピュータ方式のデメリット
- 受験費用が筆記方式よりも少し高い
日本だと筆記方式:25,380円、コンピュータ方式:26,400円 - 日本では受験会場が限られる(現時点では東京、京都、大阪、名古屋のみ)
セルビアでも筆記方式とコンピュータ方式が選べましたが、コンピュータ方式に対して私は上記のような印象なので今回も迷うこと無くコンピュータ方式を選びました。
ただ、受験費用は現地通貨の26,000RSDだったので日本円換算では約29,500円になりました。日本での受験よりも高いですね。
セルビアでのIELTS受験当日

午前中にListeningとReading、Writingを受験する場所は市街地中心にある市民向けPCセンターでした。
8:30受付開始だったので8:15頃には着いていたのですが、「時間になったら呼ぶので待ってて」と言われたので館内でしばらく待っていました。8:30頃になると他の受験者もやって来て受付が始まりました。
受付待ちの時に受験者の一人から「ここIELTS会場だけど。あなたも受けるの?」と明らかに変な感じで聞かれたのですが、まあ確かに「なんでここにアジア人おるねん」と妙に思うのも仕方ないかもね。
極端な例えをすると、もし日本のIELTS会場に一人だけアフリカ系の受験者がいたら否が応でも目立つように、私もここでは完全に浮いていました。
受付の流れは日本での方式と同じです。荷物を預け、パスポート確認をされた後にサインして、写真撮影後に入室しました。
この時のサインは「パスポートと同じ日本語で」と言われました。そのため、セルビア人受験者達の筆記体のサインが並ぶ一覧表に私一人だけ「漢字+平仮名」という日本語を記入することになったのが奇妙な感じでした(私の名前は平仮名のため)。
コンピュータの部屋はPCが3台×5列並んだ小さな部屋で、そこに9人の受験者がそれぞれ席に着きました。メモを取りたい人用の鉛筆は希望者制だったので、必要な人は挙手しました。
日本では全員に筆記用具が配られた記憶なのですが、国で異なるんですね。
そして9:00に試験開始、だったのですが問題が発生しました。
セルビアでのIELTS受験で困ったこと
今回は海外でのIELTS初受験でしたが、全世界に会場があるIELTSなので「公平性を保つためにも日本で受ける場合と変わらんやろな」と軽く考えていました。
ただ、セルビアでのIELTS受験は日本のものと少し異なっていました。
1.キーボードがセルビア語版だった
これが決定的な違いです。
日本でコンピュータ方式受験した時はいわゆる「英語キーボード」でしたが、キー自体は日本のキーボードと同じだったので何も困ることはありませんでした。
ところが、セルビア語版はキーが少し違ったんです。

上図がセルビア語版のキーボードです。
L、O、Pの右にセルビア語入力用文字が追加されています。ただ、これらの文字は英字入力では不要なので試験では特に気にならなかったんです。
それよりも困ったのは「Z」と「Y」のキーボードの位置がなぜか入れ替わっているということでした(赤枠)。
本当に不思議なのですが、日本語版の「Z」の場所に「Y」というキーが入っており、なのに出力される文字は「Z」なんです。最初は設計ミスかと思ったほどです。
そのため、私はログイン画面で「YY」というパスワードを入力できず戸惑いました。試験官の女性を呼んで入力してもらった際に「Z=Y、Y=Z」というキーの仕組みを知りました。
余談
この数日後、ベオグラード市内の郵便博物館に行ってみました。そこには歴代の切手やテレグラフ装置などと共に古い時代のタイプライターの数々が展示されていたのですが、そのどれもが全てこのキー位置でした。
そのため、セルビアではキーボードが登場した時からずっとこの位置だったのだと思います。「Y」と「Z」以外は英語版のQWERTYと配置が同じなのにその2文字だけが異なるのは不思議です。

2.キーボード上の表記と出力文字が一致しない
「Y」「Z」キー以外でもう一つ困ったのは、「Shift」を押して入力する記号です。
画像では数字の6、7、8、9、0キーにそれぞれ「&、/、(、)、=」とあるのですが、それが1つずつ右にずれていました。
そのため、「Shift+8」で「(」を入力しようとすると「/」と出力されるので、毎回一瞬考えてキーを押す羽目になりました。なぜあんな仕様なん…
これ以外の記号入力の場合も表記と出力文字が一致しないものがありました。困ったのは「One’s」のような「’」入力キーが見当たらなかったことです。
今回のWritingでは幸いそれを使わずに済みましたが、もし「’」を使いたい文章だったら途方に暮れていました。
※私が受験予定だったPCが不具合を起こしていたので2つのPC席で入力することになったのですが、両方ともキーボードは1.と2.の仕様でした。そのため、あれが一般的なキーボードなのだと思います。
3.PCが不具合を起こしていた
ようやくログインできたものの、Listeningのテスト音声が聞こえませんでした。
最初は音量がゼロなのかと思ったのですが、音量を上げても何も聞こえなかったので再び試験官の女性に来てもらいました。私のPCで何らかの不具合が起きている、とのことで急遽別のPCで受験することになりました。
でも他の受験者達は音量調整も終わっていたので彼らだけまず開始し、私は一人だけ遅れて開始しました。
IELTSは試験様式が厳密なので、そこで使われるPCも万全を期したものだろうと勝手に思っていたのですが、不具合もあるんですね。
試験官の女性2人がPCで色々再設定してくれている間、ぼーっと水を飲んだりしつつ待っていました。
完全な余談
このIELTS受験の前日にセルビア人バレーボール選手によるアジア人へのヘイト事件記事(タイ人選手に”吊り目”ポーズをした)を目にしていたり、ベオグラード市街を出歩いていた時も「アジア人嫌悪か?」と感じるようなことが何度かあったので、個人的にベオグラードの印象はあまり良くないです。
Listeningは私一人だけ遅れて開始したので、結果的に私のListening試験が終わるまで他の受験者も待つことになりました。
私のミスではないので「ごめん…」などとは思いませんでしたが、彼らの中には「あのアジア人のせいで待つことになった」と思った人もいたことでしょう。
もし、もともとアジア人に対して大なり小なり何らかの嫌悪感があった場合に今回のようなことが起きればより一層その感情に拍車がかるのでは、と思います。今回のことは単なる偶然とは言え、アジア人である自分には起きてほしくなかったことでもありました。
例えば、あれが私ではなくセルビア人受験者だったなら彼らが感じる印象もまた異なっていたと思うんです。私の考えすぎかもしれませんが。
Listeningの後は特に問題なくReading、Writingと続きました。
Writingの時、私は自分の意見の概要や流れを紙に簡単にメモ書きした後に英文作成するものだと思っていたのですが、周りのセルビア人受験者達は試験開始と同時に一斉にカタカタカタッと凄まじい勢いで入力していたので「えっ、すごいな?!メモ書き無しかよ…」と驚きました。
3回目のIELTS受験後の感想
今回はWritingしかまともな対策をしておらず、ListeningとReadingはせいぜい模擬問題を3回分解いただけです。
こっちに来てからの3ヶ月間で好んで聴く音楽といえば中国語のCPOPで、日常的に耳にしたり発したりする言葉といえばブルガリア語、という環境だったので英語を使うのは調べ物をしたりニュースを読んだりする時、もしくは英語が通じるブルガリア人やセルビア人にちょっとしたことを訊ねる時くらいでした。
Listening
Part3は地質学のフィールドワークの会話だったので地学科出身の私には馴染みのある内容だったのですが、あまり聞き取れませんでした。IELTSでは自分の知っている分野だと専門用語や背景も理解しやすくて有利なのに、ちょっと残念でしたね。
他にも聞き取れない箇所がいくつかあったせいで「5.5かもしれん」と不安になりました。
Reading
Readingはいつも通り15分くらい余ったのでPart1、2、3それぞれ5分ずつ見直しに使えました。ローマ帝国の話が出た箇所ではちょっと嬉しかったです。
「全く読めんかったわけでもないから6.0~6.5かな」と予想しました。
→ローマ帝国に関連した記事
Writing
WritingはPart1は年代別の棒グラフ、Part2は「都市圏の交通や住居問題解消のために地方に会社や工場を建設することをどう思うか」でした。Part1はうまく思いつかなかったので、配点の高いPart2から解きました。
Part1(150字以上)は20分、Part2(250字以上)は40分で解答することが求められていますが、それぞれ15分と35分くらいで書き終えたので最後の修正や見直しに10分くらい充てることができました。ただ、最終的に文字数はPart1は約240字、Part2は約290字になったので明らかに余分なことを書いていたのだと思います。
Part1も2も最後まで書けたし「6.0はあるんやないかな」程度の感想でした。
Speaking
この時の受験ではSpeakingの会場だけ徒歩15分くらい離れた別の場所だったので、時間になるまで公園で過ごしていました。平日の昼間にも関わらず家族連れや若い世代が思い思いに過ごしていたのでのどかでした。
試験官の女性は間髪入れずに厳しく質問してきたり私の回答中に明後日の方向を見たりしていたので試験中は少しざらついた気持ちになりました。
とはいうものの、日本で受験した時と同じくらいかそれ以上話せたので「6.0はあるのでは」と思いました。
3回目のIELTS結果
木曜に受験し、その4日後の月曜の午前中にネット上に結果が出ました。
土日を挟むためもう少しかかると思っていたので、この速さには驚きました。また、この日に「結果を郵送した」という旨のメールが届き、翌日には滞在先のゲストハウスに封筒が届きました。

Listening | Reading | Writing | Speaking | Overall |
---|---|---|---|---|
6.0 | 7.0 | 6.5 | 5.0 | 6.0 |
Listeningはなんとかギリギリセーフです。
Readingは模擬問題では何度も7.0を取れていたものの本番で7.0に届いたのは初めてだったので意外でした。ただ、特に対策などしていないので「次も7.0取れるのか?」という不安の方が強いです。
1番嬉しかったのはWritingです。
今回はずっとIELTSLizのWriting対策動画や練習問題でIELTS用の解答の仕方を繰り返し覚え、コンピュータ受験方式に備えてPCで英文作成の練習をしていました。wordのようなソフトを使っていたので文字数も把握でき、実際の解答欄にも近くできたと思います。
Writingで7.0を取るには論理性が求められるので、次は強固な論理を展開できるようになるのが目標です。
Writingに関する関連記事
2回目のIELTS受験前にCourseraのAcademic Essay講座で「エッセイとは何ぞや」を理解した時に思ったことなどです。
Speakingだけが今回特に悲惨だったようです。「何でこれだけ…」と落ち込みました。
出願には全て6.0以上の必要があるのでSpeakingのためだけに再びIELTSを受けないといけません。
以前、「IELTSのSpeakingは英会話が苦手な人が多い日本で受ける方がスコアが高くなる」ということを聞いたことがあります。
私は日本で受験した時はたどたどしくても5.5、割と喋ったら6.0を取れていたので「今回は6.0を取れた時よりも発音も表現も長さも改善できていたし、今回も少なくとも6.0はあるだろう」と高を括っていたのですが、私の場合実際は「単に日本会場で受けていたから」スコアが高くなっていただけだったのかもしれない、とふと思いました。
というのも、再採点後でも結果が同じだったからです。
IELTSの再採点では経験のあるシニア採点者が担当するので、その時の雰囲気なども影響する受験当日の採点者よりも公平になり、Speakingではスコアがかなり高くなったりするそうです。
私は今回のSpeakingの試験官と相性があまり良くなかったので、再採点結果に期待して10,000RSD(約11,200円)を支払ったものの、残念ながら無駄でした(もったいない…)。
セルビアのIELTSセンター曰く「再採点には2~21日間かかる」とのことだったのですが、申込んでから14日後に「再採点終わったよ」メールが届きました。
今まで受けたIELTS結果まとめ
受験月 | Listening | Reading | Writing | Speaking | Overall |
---|---|---|---|---|---|
2020/10 | 6.0 | 6.5 | 5.5 | 5.5 | 6.0 |
2020/12 | 5.5 | 6.5 | 6.0 | 6.0 | 6.0 |
2021/06 | 6.0 | 7.0 | 6.5 | 5.0 | 6.0 |
ReadingとWritingは順調にスコアが上がっているものの、ListeningとSpeakingが弱すぎますね。実生活で重要なのは圧倒的にL/Sの能力だろうに…
「L/Sは8.0~9.0でR/Wは5.0~6.0」という、ある外国人の極端なIELTSスコアをTwitterで見たことがあるのですが、日常生活で英語を話しまくってると会話力が突出して高くなるのかもしれん。
終わりに
3回目のIELTS結果も含めた感想は、キーボード問題とかよりも
「Speaking!!!!!あああああ~~~~!!!!」
かな。いやマジでホンマに。
しばらくアルメニアにいるので来月の7月にここでIELTS受ける。アルメニアだとIELTS受験代は97,000AMD(約21,600円)と、日本やセルビアよりも若干安く済むことだけが救い。
それでもIELTSのために合計6万円近く(セルビアでの受験+再採点+アルメニアでの受験)も費やすのはかなり痛い。航空券よりも高いし、何ならこっちでの生活費の約1ヶ月分やもん。
アルメニアの若い人々の多くは流暢な英語を話すので、セルビアの二の舞にならないようにせねば…
関連記事
留学を決めた1ヶ月後に受けた人生初のIELTS結果についての記事です。この時が1番対策してたかも。
2回目のIELTS結果についての記事。この頃は仕事で心身を崩していたのでIELTS対策をできていませんでした。