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Netflixのインドドラマ「ジャムタラ」感想

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ジャムタラのメインビジュアル画像

「よくある詐欺集団の話かな」と軽く思っていたのですが、詐欺集団同士の関係性や地元権力者が牛耳る腐敗構造の根深さが描かれていて目が離せない展開が続く、見応えのある作品でした。1話30分ほど(全10話)なので1日で観終われます。

メインビジュアル画像引用元:Info Page: Jamtara – Sabka Number Ayega

「ジャムタラ」とは

インドのJamtara村で2015~2016年にかけて起きた実際のフィッシング詐欺事件に基づいたドラマです。「Jamtara Review: Netflix India brings to fore a real-life crime drama with superb acting from Sparsh Shrivastava, Anshumaan Pushkar and Amit Sial」によると、詐欺の犯行は家族ぐるみで行われておりJamtaraはインドにおけるフィッシング詐欺の中心地となったそうです。

インド国内での評価は高く、「Watch: Aamir Khan heaps praise on the cast of Netflix’s ‘Jamtara’, says he loved the show」によるとインドの3大カーンの一人Amir Khanも俳優を評価しているほどです。

フィッシング詐欺を行う少年達とその後ろにいる黒幕の権力者、そして地元警察と新聞社が関わっています。

「ジャムタラ~嘘と野望~」(原題:JAMTARA -SABKA NUMBER AYEGA-)
リリース:2020年1月10日
制作元:Netflix
制作国:インド
言語:ヒンディー語
放映数:全10話(シーズン2の制作も確定済)

「ジャムタラ」あらすじ

インドの貧しい農村Jamtaraでは10代の無教養な若者集団が銀行員のふりをしてクレジットカードから金を引き出すフィッシング詐欺が横行していた。その集団のリーダー的存在がロッキー。ただ、実際に犯罪手段を考えていたのはロッキーの弟であるサニーだった。

能力は無いくせに不相応な権力に憧れがちなロッキーは地元で怖いもの知らずの議員ブラジェシュの配下につき、サニーはそんなロッキーとは袂を分かって別の方法で金稼ぎを続けるものの、新しく赴任してきたエリート警察署長ドリーがフィッシング詐欺撲滅に乗り出したことで事態は暗転。
詐欺集団と正義は最終的にどちらが勝つのか?

「ジャムタラ」公式予告編

ドラマ全体に予告のような緊迫感があります。

「ジャムタラ」の感想

以下、ネタバレを含む感想(インド作品なので熱量余って10,000字近くなっちゃったせいで長め)。

一言でいうと、誰にも同情できないドラマでした。そして問題が根深すぎる。
サイバー犯罪はそもそもまだインドでは犯罪という意識も薄いそうなので、例えJamtara村でこの詐欺集団が捕まろうが根本的解決はできないと感じました。というのも、この犯罪に関わっているのはある程度教育を受けて社会的責任がある人々ではなく、無学で貧しく、モラルの低い人々だからです。

まず驚くべきなのは詐欺集団の年齢層の低さ。彼らは学校をドロップアウトした16~17歳の少年達です。彼らは未成年であるため銀行口座すら持っていないのですが、1日中スマホから無作為に電話をかけ、クレジットカード番号を聞き出してはキャッシング機能を使って最大限度額の金を引き出し、金を稼いでいました。

彼らに人生の目標や夢は無く、「金持ちになる=幸せ」という短絡的で単純すぎる考えだけで日々フィッシング詐欺に勤しんでいます。「学校に行って努力して勉強して仕事に就いて金を稼ぐ」という面倒で遠回りな方法よりも「スマホ一つで金を巻き上げる」という安直な方法に飛びつくことに何の躊躇いも罪悪感も無いんです。

そんな少年達にとって一応リーダーなのが最年長(20歳)のロッキー。無教養で定職にも就いていないロッキーは自分よりも年下の子供の前でしか大きく振る舞えないので散々威張り散らすんですが、実際は3歳下の弟サニーの方がいささか知能が高くて冷静なので少年達は本心ではサニーの方を信頼しています。そしてそのことにロッキーも薄々気付いているのでサニーの存在が疎ましい。
フィッシング詐欺のやり方を思いつたのも元々はサニーでした(つまり、この大規模な事件はサニーが元凶)。

個人的には、教養もモラルも低い上に社会的に失うものが無く、悪事を悪事とも認識していない人間は厄介だと思います。
彼らはそもそも道理や良心に基づく話が通じない上に「自分にとって損か得か」という単純な指標で物事を測るだけで深く考えず、目的遂行のためなら手段を選ばず何でもするからです。教育を受けていないほど洗脳しやすいので、無学な子供というのは最適なターゲットだと思います。
今回それは学校をドロップアウトした少年達でした。

そして悪どい奴ほど金の動きに敏感なので、この詐欺集団に目をつけたのがJamtara村の議員のブラジェシュ。彼は地元警察や新聞社とも懇意にしているので事実上の独裁者です。
地元民は彼に逆らうことはできません。議員という職も、大方裏で金を動かして手にしたんでしょうね。

ブラジェシュは詐欺集団の少年達が逮捕されないようにしてやる代わりに、彼の駒となって詐欺を続け、利益の50%を献上することを要求します。「50%は多すぎるやろ…」と思う少年達ですが、かつてブラジェシュに歯向かったために暗殺されたブラジェシュの甥の息子の亡骸を目にして渋々彼の下につくことに。

正直、私は最初はこの一味と別行動を取り始めたサニーとその妻グディヤはドラマの中の「良心」的存在なのかと思っていました。ただ、実際は彼らもフィッシング詐欺を行っており、しかもグディヤの英語塾に通っていた生徒達も巻き込んでいたのでタチが悪かったです。

以下、インドの教育を描いた作品に関するちょっと長い余談。ここから読み飛ばせます。

他のインド作品に関する余談

グディヤは塾で英語を教えている女性です(サニーは詐欺の隠れ蓑として塾の共同経営者的存在でいる)。生徒達は都会に出て立派な職に就くことを夢見てこの塾で勉強しています。

ここで思い出したのがインドにおける英語の意義でした。インドのお受験戦争を描いたインド映画「ヒンディーミディアム」の中に、一人娘を難関学校に通わせたいお受験ママの女性が「インドでは英語は階級なのよ」と言う台詞があります。
「英語を話せればまともな職に就ける→金を稼げる」という構造なので人々は子供が幼い頃から必死で英語を習わせるそうです。そうじゃないと社会的地位の低い低賃金の仕事にしか就けず、まともな結婚もできないからです。
Jamtaraのような小さな村でグディヤの英語塾に通っていた生徒達には都市圏の子供よりも一層切実な思いがあったと想像できます。

以前付き合っていたインド人元彼(私をボロボロに傷つけた甘ったれの大馬鹿野郎)の甥は教育熱心な義姉の希望でオール英語の小学校に通っていると言っていました。ただ、これには弊害もあって家ではヒンディー語会話なのに学校では全て英語なので授業が全く理解できず勉強が嫌になる場合もあるそうです。
今メッセージをやり取りしている別のインド人男性は中学からオール英語のカトリック系学校に通っていたので「英語での授業大変やなかったん?」と聞いたら「慣れるまで時間がかかるけど慣れれば大丈夫だった」と言っていました。数学や化学も英語だと専門用語をイチから覚えないといけないので結構根気が要りそうやなと個人的には思う。

インドの受験戦争の激しさは有名で、大学受験の予備校に通う生徒が主人公のWebドラマ「Kota Factory」ではそれが忠実に描かれているそうです。例の大馬鹿野郎は性格に問題はあったものの学歴は高かったので、自分が経験した受験予備校の雰囲気と全く同じだと称賛していました。
この作品はTVFPlayで観れて、エピソード数は全5話と少なくても毎話で苛烈な競争主義の重さが伝わってきます(監督のこだわりなのか、なぜかモノクロドラマ)。
※2021/08/29追記:最近Netflixでも配信開始されていたのですが日本からも観れるのかは不明

TVFPlay 「Kota Factory」公式予告編

TVFPlay作品の中でなら「FLAMES」も良作だと感じました。
「Kota Factory」と同じ大学受験ものではあるのですが「FLAMES」の方は恋愛の色が強く、一途で初心な少年の恋心が描かれていてかわいいです。

TVFPlay 「FLAMES」公式予告編

ただ、このTVFPlay、なぜかPCだと操作しにくい&観れないのでスマホアプリをDLして観ていました。

Netflix作品なら「Daughters Of Destiny」で別視点からインドの教育を見ることができました。
貧しい家の子供達に小学校~高校まで無料で教育を施している全寮制学校で学ぶ3人の少女に焦点を当てたドキュメンタリーです。

彼女達は完全に英語環境で教育を受け、大学にも通います。この作品で印象的だったのは学校で得る価値観と実際のインド社会とのギャップの激しさです。
彼女達は欧米出身の教師達から自由で平等な生き方を学ぶものの、いざ社会に出ると女であることや低いカーストや貧困家庭出身であることによる不当な扱いや劣等感に苦しみます。たとえ英語が流暢で学業成績も良くても、社会構造自体が最大の障壁なんです。理想と現実の乖離を実感しました。

Netflixのドキュメンタリー「Daughters Of Destiny」公式予告編

「ジャムタラ」の感想に戻るよ~

17歳のサニーは30万ルピー(約45万円)という大金を渡す契約で20歳のグディヤと結婚します。これはいわゆる偽装結婚です。
インドの平均年収はいくら?格差大国インドの驚くべき給与事情」によると農業従事者の平均年収は約11,000ルピー(約17,000円)だそうなので、大半の人々が農家か無職であるJamtara村では30万ルピーという金額は単純計算で20年分の年収に相当するのかもしれません。

グディヤは村を出てカナダに渡るための資金が必要でした。一方で、女性が電話をかける方が詐欺を行いやすいのでサニーにとってはグディヤと組むことは有利でした。
これは「女性は犯罪なんかしないだろう」という一般的な認識を逆手にとったんでしょうね(すなわち、電話をかけてきたのが女性の声であれば相手の警戒心を弱めることができる)。教養は無くてもこういう姑息で卑劣な部分には知恵が回るのが彼ら。
そのため、村の詐欺集団の少年達はどんどん結婚していきます。英語や他の州の言語(ネパール語やベンガル語など)が話せると詐欺の幅も広がるので彼らはそれも重視していました。

ただ、見た感じ、グディヤからすれば金目当ての結婚でしかなかったものの、サニーは多少はグディヤに恋愛感情を抱いていたのでは?とも思うんですよね。
でも「これはただの契約。結婚はしてもsexはしないから」とグディヤに宣言されていたせいでサニーは結婚後も一切手を出さなかったのでは、と予想しています。

そんなグディヤもサニーと一緒にいるうちに情が湧いてきたのか、物語後半になるにつれて不利な状況に陥っていくサニーのことを心配し始めるんですが。

またまた余談①

グディヤ役のMonika Panwarはインド映画女優にしてはあっさりした顔立ちの女性ですね(ゴリゴリのインドメイクとサリーを纏ったら別人なのかもしれんけど)。恋愛映画「Love Aaj Kal」にも出てたらしいけど、どこで?!Wiki見ると端役だったので分からん…

あと、映画「Super 30」にも出てるらしい。「Super 30」は我らがHrithik Roshan(「WAR!」でTigerの憧れのボスだった人。私はあの作品で「Hrithik Roshanイイネ!!!!」になった)が出演しているだけでなくインド国内でも高評価だそうなのでいつか観てみたいです。

「Love Aaj Kal」の主題歌公式動画

インドのポップ音楽界で絶大な人気を誇るArijit Singhの曲が使われています。好きすぎて何度も聴きました。

「Super 30」公式予告編

貧困層の少年少女に教育を施した男性の話で、実話に基づくそうです。

「ジャムタラ」の勢力図の簡単なまとめ

ドラマの物語が進むにつれて勢力図が分かりにくくなっていきました。なのでちょっと簡単に整理します。

ブラジェシュ一味

  • 議員のブラジェシュ、ロッキー、ロッキーの詐欺仲間

ブラジェシュが用意したコールセンターで詐欺電話をかけまくる奴ら。ブラジェシュはサニーも仲間にいれたがるがサニーはずっと拒否し続ける。
ブラジェシュの仲間によってグディヤの弟が射殺され、ブラジェシュはサニーにその濡れ衣を着せる(サニーは結婚式当日にロッキーにも濡れ衣を着せられている)。また、好色男のブラジェシュはグディヤにも執拗に拘る。

サニー夫婦

  • サニーとグディヤ

グディヤが警察署長のドリーにブラジェシュ・コールセンターの位置を密告した仕返しとしてブラジェシュに英語塾を燃やされたり、家に押しかけられたりする。それでも2人は相当な額を稼いでいる。グディヤはサニーに内緒で出国の手続きを進めている。

警察

  • 新しく赴任してきた女性署長ドリー、サイバー犯罪課のサウラブ、Jamtara警察で30年間務めているビサワ

最初はブラジェシュにビビっていたビサワも、一人でフィッシング詐欺撲滅に取り組むドリーを目にするうちに捜査に協力的になる。サウラブはガタイはいいけど普通の大卒男に過ぎないので土壇場では役に立たない。

新聞社

  • ロッキーやサニーと知り合いであるアナス

「特ダネ書け!」と編集長から圧をかけられている23歳の青年でサニーの友達。あの取り巻きの中で1番教養がありそう。ブラジェシュに追われるサニーを逃がそうとするも、編集長によって裏切られる。

2人の少年

元々はロッキーやサニーの詐欺仲間にいたものの、途中で傍観席に着く。ロッキーとサニーの関係や、今後の村の行方などをマハーバーラタの叙事詩に掛けて状況把握していく。なんか勝手に自分達の派閥を作り上げたけど警察が詐欺集団を一斉逮捕し始めた時、捕まらないように坊主頭になった。
少年2人が予言した「蛇とマングースの戦い」は日本での「窮鼠猫を噛む」みたいな形容なんかな。

ドラマで一貫して際立ったのはブラジェシュの横暴ぶりですね。
何か起きてもすぐには手を下さず、まるで獲物をいたぶるかのようにニヤニヤしながら屈強な部下と武器を見せつけて「俺に歯向かえばどうなるか分かってんだろうな」と脅して相手を怯えさせては悦に入るクソ野郎です。
司法や行政が有効に機能していない場所ではああいう輩が最も力を持つのだと思います。警察署長ドリーが赴任するまでは地元警察は彼との癒着でズブズブでした。

ふと思ったけど、インド作品にはなぜか「優秀な敏腕女性とろくでなしの無能な男orおっさん」の組み合わせ多くない?それだけ現実生活で男連中が汚職や堕落で腐敗しているのかもしれない。
これは別に不思議なことではないけど、個人的には、腐敗しきった前時代的な男社会構造に一石を投じる役目を若い女性に押し付けているような印象も受ける。男尊女卑が酷いインドで「女性エンパワメント」を描く必要性があるというのも理解してるけどさ。私がひねくれ過ぎなんかな。

グディヤの弟を射殺した犯人としての濡れ衣を着せられたサニーとサニーに同行した父親は署で取り調べを受けるんですが、その時にサニーの父親は息子を庇って嘘の自供をします。この父親は飲んだくれのどうしようもない父親として描かれていたのですが、サニーのために2回も罪を被ろうとするので完全にダメな父親ではないんですよね。
ただ、父親は持病の結核のせいで死期が近いにも関わらず留置所に拘束されることになったので、なんとか父親を助けようとしてサニーは最後の手段としてブラジェシュを頼ります。ブラジェシュなら警察に口聞きできると考えたんでしょうね。

その時にブラジェシュが見返りに要求したのは「今までサニーが詐欺で稼いだ利益全部」と「妻グディヤの体」。サニーは金はなんとか集めるも、グディヤを渡すことは拒否したのでブラジェシュに監禁されます。

またまた余談②

この時私がおぞましさを感じたのはブラジェシュの乳母だった老婆です。
彼女はブラジェシュが幼い頃からブラジェシュの父親の性欲処理をさせられていました。なのに老婆は依然としてブラジェシュを溺愛し続けており、自分が犯罪に加担していることに何の疑問も抱いていない様子だったからです。
インドではメイドの女性が時として性的虐待を受けているのは知っていたものの、それを当たり前のように平然と口にするブラジェシュにも否定しない乳母の女性にも愕然としました。

メイドと主人の肉体関係はNetflixのインド映画「Lust stories」でも一瞬描かれていました(これは一応合意の関係ですが、上下関係を考えるとメイド側に拒否権は無かったでしょうね)。この映画ではオムニバス形式で現代的なインドの恋愛が描かれています。

Netflixのインド映画「Lust Stories」公式予告編

監禁されたサニーを救出したいグディヤは、なんとしてもブラジェシュを逮捕したい警察署長ドリーに協力を申し出ます。この時にグディヤは自分は詐欺には無関係だと白を切るので私は失望しました。ドリーもそんなグディヤのことを信用はしていません。

ただ、互いの利害が一致したのでブラジェシュを「グディヤへの強制猥褻罪」の現行犯として逮捕するためにグディヤはブラジェシュの元に向かいます(このシーンのブラジェシュは念願のグディヤと情交に及べると有頂天になっているので輪をかけてキモい)。

無事にブラジェシュも逮捕され、サニーがブラジェシュに献上した金も回収した後のグディヤの行動力は凄まじい。てっきりサニーなんか見捨てて一人で大金抱えてデリーに逃げるかと思ったんですが、グディヤはサニーを助けに行きます。

ただ、ボコボコにされて監禁されていたサニーは憔悴しきっているので逃げることもままならないんです。それでもサニーとグディヤは二人でカナダに行くのだとばかりに必死に逃げます。それを追うブラジェシュの部下達。
でも、門を乗り越えようとした時にサニーは撃たれて落下。グディヤは嘆き悲しみ、ここでシーズン1は終わります。

シーズン2があると公式発表されているので、シーズン2では「逮捕された後のブラジェシュがどうなるのか」「グディヤはどうなるのか」「新聞記者のアナスやマハーバーラタ少年2人が新たな動きを見せるのか」などが描かれるんかな、とか勝手に予想しています。

「ジャムタラ」の制作秘話

Behind the scenes with the Jamtara director Soumendra Padhi and cast」によると、このドラマの企画は2015年に遡るそうです。当時、フィッシング詐欺事件の記事に興味を覚えた監督が脚本チームを現地のJamtaraに派遣したそうです。その事件では5年生を落第した少年達が人口2,000人以下の小さな村Jamtaraでサイバー犯罪を行っていました。

また、ドラマ「ジャムタラ」の撮影終了後、なんと監督の妻にJamtaraから詐欺電話がかかってきたそうです。「あなたがJamtaraからしようとしてることはお見通しよ」と彼女が言うと、電話をかけてきた相手は一瞬まごついた後「気にしないで、愛してるよ」と言って切ったそうです。事件発覚から数年経っても未だにJamtaraでフィッシング詐欺が横行していることが分かります。

上記ページにはサニーやドリーを演じた俳優へのちょっとしたインタビューもあり、興味深いです。ドリーのAksha Pardasanyはノンスモーカーにもかかわらず喫煙の演技を求められたので咳き込みながらなんとか撮影に挑んだそうです。喫煙者比率が少ない女性の喫煙シーンがキャラの意外性を際立たせるのは理解できるけど、苦しかっただろうな。

Netflixによる現地での取材動画

実際にJamtaraを訪れ、現場の声を集めたドキュメンタリーです。ドキュメンタリーによると2019年には107人もの住民がサイバー犯罪によって逮捕され、その時に押収されたのは224台のスマホ、それよりも100枚以上多いSIMカード、他にもATMカードやバイク、車、小切手帳など、そして15,44,000ルピー(約230万円)もの大金だったそうです。
大量のバイクや車の購入に充てた金も含めると相当な額になりそうです。

ドキュメンタリーに出ていた人曰く、この地域の普通の労働者なら1日200ルピー(約300円)くらいしか稼げないそうなので、単純計算で年収は約10万円ほどです。そんな生活をしている彼らからすれば一瞬で数年分の年収を稼げる詐欺はさぞや魅力的でしょうね。

村にはサイバー犯罪で稼いだ金で建てた豪邸が建ち並び、以前はそこら辺に座っていた住民達も今や都市圏のホテルなどに移って詐欺の「仕事」をしていると地元警察官が話していました。もはやJamtaraだけの問題ではなくなっているんですね。

取材に応じたフィッシング詐欺を行う男(一応、布で顔を隠している)曰く、100~150件/日ほど電話をかけて1件詐欺に繋がるかどうかの割合というので、徒労の時間の方が多そうなんですが一発でも当たれば大儲けなのでその一縷の望みに賭けているのかもしれません。
「儲けた金でどのように人生が変わったか」という質問に「…俺の人生?」と呟いたきり何も答えられない男の姿が虚しかったです。
彼には金はあっても自分の人生に喜びも楽しみも何も無い。

このドキュメンタリーが撮られた2019年ですら依然としてフィッシング詐欺は続いており、しかもそれがインド国内で着実に広がりつつあるそうなので、もはや歯止めがかからなくなっていることが分かります。

まとめ

インドの犯罪作品で描かれる犯罪の幅はとてつもなく広いとつくづく感じます。
韓国も犯罪映画を描くのが突出して得意な国だと思うのですが、韓国の方は知能犯による残忍な殺害事件やゴリゴリの高学歴エリート同士の軋轢や汚職、裏切りといったテーマが多いとすると、インドの方は政治と権力者の癒着、そして先進国では考えられないような底辺社会を這いずり回る闇を描いたテーマが多い気がします。
常識や一般理念が通用しないので、私は後者の方が恐ろしいです。

それにしても「外道の極み」のような言動や行動を容赦なく演じられるインドの役者はすごいですね。「そこら辺をうろついてたクズ野郎をそのまま撮影につれてきたんか?」と思ってしまうくらい生々しいクズさをガンガン見せつけてくる。以前、Netflixで「リクシャー(英題:AUTOHEAD)」というインド映画を観た時に特にそれを感じました。あれは鑑賞後に非常に嫌な気持ちになった作品。
また、カンナダ語映画の「浄め」は非常に重いテーマの良作ですが作中で女性にとって悲惨なシーンが描かれており、その時のリアルさも役者の上手さによるものだと思います。

クズ野郎の演技でいうなら、EROS nowの「FLESH」は内容が内容なだけに一際悲惨なドラマでした。人身売買を取り扱った犯罪ドラマのため、子供や女性の誘拐、性暴力などがこれでもかと描かれて胸糞悪いシーンが多いです。ただ、あのような組織的犯罪が今もどこかで起きているということを痛いほど理解できます。
このドラマのレビューは散々なんですが、Sushantのあの事件以降インド内で「EROS」作品(というかSalman Khan)叩きやボイコットの風潮が強まったせいもありそうです。
このドラマでも人身売買組織を追うメイン警察官は女性です。

終わりに

この前Netflixのインド映画「AJEEB DAASTAANS」(4つのオムニバスもの)を観たけど狙ったようなどんでん返し展開で残念ながら話が薄っぺらかったんよね…

あと、同じくNetflixの「White Tiger」も観たけど「”欧米人が見たいインド”を映した綺麗なインド映画」という感じで個人的には最初から最後まで退屈だった。Netflix作品だとどうしても外国人ユーザーを意識しないといけないから仕方ないのかもしれん。

インド作品が好きとはいえ全ての作品を楽しめるわけではないから、たまに夢中になれる作品に出会うと嬉しい。個人的には「Jamtara」は当たりだった。

Netflixのインド映画なら「LUDO」が大好きなのでこの映画の感想を書きたかったけど時間が経ってしまってもうあの時の熱意を文字にぶつけられない…もう一度鑑賞し直したら感想ぜひ書きたい。
あれは本当に笑って楽しめる超絶ハッピーエンド映画で好き。

Netflixの「LUDO」公式予告編

4組の男女が絶妙なタイミング&上手い具合に交錯していくんですよ。

でも私がインド映画で1番好きなのはもはや自分の中で不動の殿堂入りしてその偉大さを爆音で轟かせまくっている「Baahubali 2 王の凱旋」一択やけどもね?!!!!

「バーフバリ 王の凱旋」公式予告編

予告編だけで体中の血が熱くなるぜ…
好きすぎて20回は本編を観た気がする。

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