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Netflixのアメリカドラマ「Tiny Pretty Things」感想

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Tiny Pretty Thingsのメインビジュアル画像

あまりにも目が離せないので一気に鑑賞しました。私はバレエというものに何の知識もなく、そのせいで興味も無かったのですが、予告が気になったので観始めるとあっという間でした。

メインビジュアル画像引用元:「‘Delicadas y crueles’, una coreografía perversa y retorcida al más puro estilo ‘Pequeñas mentirosas’

「Tiny Pretty things」とは

バレエ学校で起きた事件をきっかけに様々な人間図が描かれる同名小説をドラマ化した作品。ダンスシーンでは実際に役者本人が踊っているそうです。Rotten Tomatoesでは批評家からも視聴者からも散々な評価なんですが、根強いファンはいるので意見が割れてますね。

「タイニー・プリティ・シングス」(原題:Tiny Pretty things)
リリース:2020年12月14日
制作元:Netflix
制作国:アメリカ合衆国
言語:英語
話数:シーズン1(全10話)
※シーズン2にも続きそうな終わり方ですが、現時点でその情報は無し

「Tiny Pretty things」あらすじ

アメリカの名門バレエ学校のトップダンサーである少女キャシーがある晩屋上から転落し重体に。そんな大事件が発生した学校に奨学生として急遽入学することになった黒人のニヴェーア。

生徒も学校の経営層も何かを隠しているように見えるし、日々のバレエでの競争も激しい。そんな中でも自分を見失わずに正義心を貫くニヴェーアを中心に、徐々に周りの意識も変わっていく。果たして誰が何のためにキャシーを突き落としたのか…?

「Tiny Pretty things」公式予告編

ドラマは終始不穏なので、予告編は本編の雰囲気をよく伝えていると思いました。

「Tiny Pretty things」感想

ここからはネタバレを含む感想。

全体的に感じたのは「権力者に頼らざるを得ない構造への告発」です。ドラマ内では生徒同士の競争だけでなく、母娘間の葛藤や同性愛、手段としての肉体関係などが色々な角度から描かれています。
中心人物はニヴェーア、ベット、ジューンの3人の少女かなと思います。

ドラマ内ではバレエダンサー達は10代の頃から厳しい競争にさらされ、私生活の楽しみよりもバレエを優先させるような日々を送っています。

優秀な生徒が集まるバレエ学校では「とにかく主役が欲しい」「もっとバレエを上手くなりたい」という野心に燃えるダンサー達が互いに切磋琢磨し合うという意味では刺激のある良い環境だろうなと思いました。
ただ、その一方で作中ではライバルを蹴落とすにはほんの僅かなことでも足を引っ張り合うので、水面下では互いに不信感を募らせ、腹の探り合いをしている不安定な環境でもありますね。

名門学校に入学する時点でハイレベルなので、生徒達はみんな自信に溢れています。特にその野心が顕著なのが、キャシーが植物状態に陥ったことで自分が主役に抜擢される可能性が1番高くなったベットです。ベットの姉はトップバレリーナであるプリマで、母親はバレエ学校の理事会にいます。

ベットは最初はニヴェーアに対し露骨な嫌悪感を出したり、他にもなかなか自己中心的な言動や行動が多いので「うわ~面倒な子やな」と思っていたのですが、終盤になるにつれて彼女が一人で格闘していた孤独が明らかになっていくので同情してしまいました。正直ホンマに不憫なので、終盤でイタリア系の明るい彼氏家族に守ってもらえて良かった。

ベットは優秀な姉を持った妹として常に劣等感を抱えていただけでなく、母親からも姉ほど期待されていないことに悲しさを感じている子でした。主役を踊ることで必死に母親からの愛情を得ようとしていたように見えます。
そのせいで、ベットはライバル達を蹴落とすためなら何でもやっていたんでしょうな。

ベットはもちろん練習にも厳しく励みます。そのせいで足を疲労骨折までするのですが、「踊れない自分には価値が無い」とばかりに自分を追い詰め、平気なふりをして過ごします。特に、理事会長に立候補した母親のために身を粉にして頑張る姿などは痛ましさすらありました。

ただ、母親はそのベットを利用するだけ利用し、自分が不都合を被る時には平気でベットを見捨てるような人物でした。

キャシーを突き落とした犯人はベットの姉です。そして母親はそのことを知っており、プリマである姉の地位を守るために、母親と姉は二人で結託してその罪をベットに被せようとしていました。
何も知らないベットは自分の晴れ舞台当日に警察に拘束されることになっても二人から助けられることはなく、明らかになった真実に愕然とします。あの回は本当にかわいそうだった。

ベットと共に野心家として描かれるのが韓国系アメリカ人であるジューンです。
ジューンの母親(韓国人)は自分が移民として苦労してきたので娘が自立することを望んでいます。そのため「バレエなんて無駄。主役じゃないなら意味がない」というかなりの強硬派で、バレエを続けたいジューンを辞めさせようとまでします。バレエを続けるには主役を取るしかないジューンはベット同様必死に主役の座に縋り付こうとします。

ただ、ジューンの方が性格は悪いですね。最後まで好きになれないキャラだったし、フランス出身のムスリム男子ナビルがジューンに好意を寄せていることを明らかにした時は「おま…人を見る目なさすぎ…」と思った(ナビルの彼女であるキャシーも嫌な性格)。

ナビルは良い奴なのかどうか正直分からないです。男子勢で人として良い奴なのはベットの元彼であるオレンと、そのルームメイトのシェーンくらいじゃないかな。オレンは純粋すぎて居場所が無さそうだった。何でニヴェーアと付き合いたいと思ったのかは不思議だけど、精神的に強くないオレンとは対照的に何があってもぶれない最強メンタルなニヴェーアが眩しく感じたのかもね。

完全な余談

人種問題が大きく取り沙汰されるようになってきた最近ではドラマや映画作品にアジア人やアフリカ系アメリカ人(以後、便宜上「黒人」)を混ぜることがかなり増えた気がします。ただ、そんな彼らは作品内では大体変人として描かれるので(アジア系は特に)、私はこの傾向に対して若干の忌避感を覚えていました。

例えば、Netflix作品なら「Tall girl」の主人公のアジア系友人、「Never have I ever」の主人公の友人2人(アジア系と黒人)、「A-typical」の主人公の友人(インド系)、「Sex education」の主人公の友人(黒人)などです。彼らは「変人」としてしか作品内で地位を与えられていないんですよね。
「13 Reasons why」のアジア系女子は変人ではないですが、あくまでも白人の友人達の存在を際立たせるための要素を求められており、アジア人や黒人が「普通の人間」として描かれないことに私は違和感がありました。ティーン向け作品が揃いも揃ってこんな調子なので、子供の頃からの刷り込みを助長してしまうのでは?と内心思います。

でも、「Tiny Pretty things」の主人公である黒人少女ニヴェーアはマイノリティを意識しすぎた作品が陥りがちな「アジア人/黒人を変人、もしくはかなり理解のある良い人として描く」が反映されていなかったのでストーリーに集中できました。個人的には人種差別の意識を変えるにはこっちの路線の方がいいと思うんですが…
ニヴェーアは独立心が人一倍強く、自分の中の確固たる芯を貫きます。だから善悪の基準も自分で決める。自分が駄目だと思ったら駄目だし、自分が賛成できるのなら全力で賛成する。見てて潔いです。

なぜ彼女がここまで強く生きているのかは、彼女の母親を見ると分かります。
ニヴェーアの母親は男に縋って生きる典型的なタイプで、付き合う相手もよく変わっていました。ある時、今までで1番のクズ男であった相手が彼女に暴力を振るった際、息子にまで危害が及びそうになったので彼女はその時に相手を殺してしまい、そのせいで刑務所に入っていました。

ニヴェーアはそんな母親を目にしていたので子供らしく甘えることができなかったんだと思います。自分ひとりで何もかもするしかない。
また、いつも男に媚を売って生きる情けない母親へ嫌悪感を抱き、「自分はああなりたくない」という意識もあったのだと思います。だからこそ、10代の少女にしてはやや達観的で、他人に頼らない性格でもあったのだと思います。

ストーリーを通して、ニヴェーアという人の生き様の美しさを感じます。彼女は何があってもぶれない。味方が一人もいなくても、一人でも戦い続けるだけの芯の強さを持っています。それはある意味危なくもあるので、ストーリーが進むにつれて彼女が人に心を開いていった時は安心しました。

1番の黒幕は校長の女性かもしれません。彼女は学校の栄誉、存続のためなら汚い手も使います。そこにあるのは「芸術を行うにはパトロンに依存せざるを得ない」という問題です。そのため、学校への寄付金を出しているパトロン用風俗店で女子生徒達を働かせる手引もしていました。

校長自身も若い頃被害者で、女である自分がパトロンの男達に搾取される過去を経験しています。自分が校長になった時に当時の自分が味わった嫌な体験をすることでしか資金を手にできないジレンマもあったのかもしれないのですが、彼女が加害者側に加担していたのは事実です。

そして、これまた重要なのが振付師のラモン。ベットの姉の彼氏です。
バレエダンサーが舞台で踊れる機会を提供する意思決定者は振付師にかかっているらしく、作中ではみんなラモンにアピールを欠かしません。たとえラモンのやり方に問題があっても、そのせいで役を得られなくなることを恐れ、ニヴェーア以外で声を上げる生徒はいませんでした。

ベットの姉がキャシーを突き落としたのもラモンが理由です。ラモンとキャシーが親密な関係だったので嫉妬し、自分の役がキャシーに盗られることを恐れた姉はキャシーを消そうとしたんですね。
「え、そんな理由で?」と思ったのですがそれくらい振付師の意志は影響が大きいのかも。

ただまあ、このラモン、シーズン1の最終回でとんでもない事実が明らかになるんですよ。正直、ベットの姉がキャシーを突き落としたことよりもこっちの方が衝撃でした。
あの終わり方だと、恐らくシーズン2はまた荒れますね。

Are the Cast of ‘Tiny Pretty Things’ Really Dancing?」によると、生徒役の彼らのほとんどは実際に活躍するダンサーというのだから納得。ニヴェーアを演じたKylie JeffersonはL.A.’s Debbie Allen Dance Academyに最年少で加わり、ナビルを演じたMichael Hsu Rosenは17歳からブロードウェイで活躍し、ジューンを演じたDaniela NormanはEnglish National Balletの一員だそうです。
ダンスも演技もできるとは…特にジューン役のDanielaは凄まじい名演技だったと思います。

「Tiny Pretty things」公式動画

ドラマ内のダンスシーンの一部です。作中では数々のダンスシーンを見れるのもまた良かったです。

終わりに

感情の起伏が激しいティーンエイジャーが中心の話なので観てて疲れるかもな~と最初の頃は不安に思ってたけど、まあ心配してたほどでもなかったかな。「Gossip Girl」とかよりははるかに精神衛生上良い内容。
シーズン2があるとしても彼らの実生活の青春や学業もあるだろうし短期間では配信されなさそう。あと、10代の成長速度は速いから例え続編が出ても「えっ誰?」のような外見になってるかもしれない。「Harry Potter」シリーズの俳優陣のように。

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