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ウクライナ入国時のコロナ対策アプリ「Vdoma」の利用感想

いやはや、このアプリには困らされましたよ。果たして需要があるのか分からんけど、2021年9月時点で必須だったウクライナの入国時のコロナ対策アプリ「Vdoma」についてと、そのアプリを止めるためにキエフ内で受けた抗原検査のことを書いていきます。

自分がWeb制作会社で働いていたせいか同情することもあって、この記事の文字数は約7,000字と少し長くなりました。

メインビジュアル画像引用元:Как установить приложение «Вдома» и прекратить самоизоляцию? Инструкция от Misto.travel

コロナ対策アプリ「Vdoma」とは

ウクライナ入国時に「2回目のワクチン接種後14日以上経っていない人」「そもそもワクチン受けていない人」の入国後の隔離を管理するためのスマホアプリです。ウクライナ政府が関わっている本格的なもの。

気になる人はダウンロードはしなくてもアプリ概要は見ることができます。レビューは凄まじい低評価の嵐。
→Google Play Stoeページはこちら
→Apple Storeページはこちら

入国審査官にパスポートに入国スタンプを押してもらうには、事前に以下の操作が必要です。 以下の情報を「Vdoma」アプリに入力して審査官に「確認」ボタンを押してもらいます。

  1. 空港のフリーWi-Fiを使ってアプリをインストール
  2. 確認用SMS受信
    →私はアルメニアのSIMを入れていたので受信できました。
    ※認証用SMS受信のためにウクライナ入国時点で電話番号付きのSIMカードを入れている方がいいと思う。
  3. 氏名+父称+滞在期間入力
    →ここで父称入力があるのがスラブ文化圏っぽいですよね。ロシア語名表記には性別で厳格なルールがあるものの私の父親の名前のロシア語ver.は分からなかったので普通にローマ字で入力しました。父称については別に何も言われないため、外国人旅行者ならテキトーでも良さそう。

これらの個人情報は少なくとも隔離期間が終了するまではウクライナ政府のデータベースに保管されるらしいです。

私はこの時アルメニアで既に2回のアストラゼネカ製ワクチン接種を済ませていましたが、ウクライナ入国時に2回目のワクチン接種後13日目だったせいで「ワクチン接種未完了者(すなわち、隔離対象者)」扱いにされることになりました。まあ、しゃーないよね。

「13日後も14日後もほぼ同じやん!」などという主張に対してもOK出してたら「13日後でもOKなら12日後23時間55分でもほぼ13日後やん!」という具合にキリが無くなりそうだし。

言い訳を許されるなら、私はウクライナ渡航前にこの「14日間」という期間を心配して「Visit Ukraine」サイト内の入国条件を事前にちゃんと確認していました。ただ、他の国の入国条件にならきちんと表記されていた「ワクチン接種後14日以上」という期間の明記が無かったので、「へ~、ウクライナは抗体生成期間は気にしてないんやな」と、接種後13日後の私でも接種完了済証明書さえ提示すれば入国をクリアできると思ったんです。

でも違いました。どうやら「14日後」は暗黙の了解だったらしい。これは私の愚かな勘違い…

余談ですが「Visit Ukraine」サイト自体はスマホでも使いやすい上に必要な情報が見つけやすい便利なページです。コロナ禍の今ウクライナ入国する際に必須なウクライナ政府公認の健康保険(コロナ治療も含んでいるもの)もこのサイト内から購入できます。アルメニアの空港でキエフ行きの飛行機にチェックインする際、その保険加入証明書(PDF)を提示する必要がありました。

ウクライナのコロナ対策アプリ「Vdoma」で行うこと

そして問題のこのアプリをインストールした人が毎日要求される動作は次のことです。

  • 外出時のタイマーON
  • ランダムな時間に顔写真送信

外出時のタイマーON

Vdomaで表示される残りの隔離期間
外出時のタイマーを動かしている時

自己隔離対象者は1日2時間以内の外出(半径1km以内の必要最低限の用事に限る)が許されており、外出タイミングに合わせてタイマーをON/OFFする必要があります。

ただ、このタイマーはバックグラウンドで動き続けるにしても充電の消費が著しいんです。私は充電が長持ちするmotorolaスマホを使っており、普段の日常生活では2日に1回フル充電する程度で済みます。

でもこのタイマーが動いている時は15分間で10%もの充電が無くなりました。
「これは異常や…」と思ってバッテリーセーバーをONにしてようやく15分間で5%の消費にまで抑えられましたが、このタイマーを稼働させていない時は写真を撮ろうがGoogle Mapを開こうが15分間で1%も消費されなかったので、いかにこのアプリの消費が激しいかが分かります。

あと、2時間以内の外出が許されているとはいえ、「隔離先に戻りましたか?(=はよ帰れ)」とちょいちょい通知が入るのでそれも面倒でした。

ランダムな時間に顔写真送信

これもまた面倒なもので、「きちんと隔離先にいますよ」の証明として顔写真を送る必要があります。しかもその時間帯はランダムなので、データ通信が可能だったりWi-Fi環境がある場所にいると「写真を送ってください」と通知が入ります。

顔写真はAIが認証しているようで、画面のデフォルメキャラの指示通りに「左を向く」「右を向く」「左に頭を傾ける」「右に頭を傾ける」の4パターンを行わないといけません。なのにこのアプリ、「右を向く」を全然認証してくれなかったのでそのためだけに何度も何度も顔写真撮影を繰り返すことになりました。

「標準の顔として登録されている目鼻くっきりのウクライナ人の顔とは違って平らなアジア人顔の私はもしかして鼻が認識されてないのでは?!」とも思ったのですが、「左を向く」時は毎回一発OKだったので「右」だけがなんかおかしかったんだと思います。
別に髪の毛がアシメなわけではないんやけどね…

キエフでPCR検査できる研究機関「DILA」

扉の隣の小窓から検査を受けたいと伝える

「Visit Ukraine」サイトにこの「Vdoma」アプリを停止できる条件として「入国後72時間以内に指定の研究機関や病院で陰性結果が出ればアプリ利用も自己隔離も不要」と記載されていたので、さっさとこのアプリから解放されたかった私は入国の翌日に研究機関の一つに行きました。

ただ、「Visit Ukraine」内の「Vdoma」解説ページ内から遷移できる検索ページから研究機関を見つけるのもまた一苦労なんですよ。
→研究機関検索ページ:https://labs.phc.org.ua/

私が検索した9月下旬当時、スマホからだとサイトの検索JSがうまく機能していなかったのか、場所検索画面を開いて一瞬でもスクロールすると勝手にリロードされ、いつまで経っても地図上に研究機関が表示されなくなるバグが頻繁に発生しました(JSの読み込み時間を考慮して数十秒待っても同じ)。しかも地図上の地点と研究機関リスト名が連動していないので、キエフの通り名や住所が分からず土地勘が無い人間にとっては「どの研究機関が一番近いのか」を見つけることができませんでした。
※この記事を書いている2021/10/03現在、PCからはちゃんと検索できました。

最終的にはその検索画面を使うのは諦めてGoogle Mapから直接目星をつけ、研究機関一覧リストにその研究機関の名前と住所が載っているかを確認し、向かいました。

ちなみに研究機関は「DILA」という施設名でキエフ市街地のあちこちにあります。そのため、まずはGoogle Mapで「DILA」と入力して調べると一番近い施設を最短で見つけられるかも。
「DILA」は朝7時という早朝から開いているようでした。

ウクライナの研究機関「DILA」でのコロナ陰性検査

DILA内では検査希望者は靴カバーを履かされる上に従業員も感染予防服を着ている

アプリ停止には入国後72時間以内に「PCR検査で陰性」もしくは「抗原検査で陰性」であればいいと記載があったため、結果が出るまでに7~8時間かかるPCR検査ではなく、30分間で結果が出る抗原検査を受けることにしました。

受付の女性には英語が通じなかったのでGoogle翻訳を使うことになりました。余談ですがウクライナでは本当に英語が通じません。ロシア語を話せた方が便利だと思う。

検査自体は鼻をグリグリされて終了で、30分後に登録メールアドレスに「陰性」結果がPDFで送られてきました。ワクチン2回接種完了してるし、日常的に運動や筋トレもしていて体力もある上に外出時は常にマスクを着けていたので「そりゃそうやろ」とは思ったけど。

検査代金は合計650UAH(約2,700円)でした。

  • 検査代:600UAH(約2,500円)
  • 英訳代:50UAH(約200円)

この時、検査代金に「英訳代」が追加されていたので若干の失望感を抱きました。
今まで日本、ブルガリア、セルビアでPCR検査を受けたことがありますが、この中でわざわざ英訳料金を追加してきたのは日本だけです(PCR検査代25,000円+英訳代5,000円くらい)。
また、アルメニアでは病院から正式なワクチン接種証明書も発行されたことがありますが、ブルガリアでもセルビアでもアルメニアでも結果用紙に最初から当たり前のように自国語+英語が併記されていました。

「英訳代」なんて言ってもフォーマットはどれも同じなので、最初から英訳を用意していれば済むはずです。研究機関のこの英訳代の他にもウクライナではATMでの現金引き出しや空港チェックインという様々な場所でやたらと高い手数料を要求されることが多かったので、小金を稼ぐために内訳不明の変な手数料を上乗せしまくってくる日本のサービスと似たような雰囲気を感じました。

完全な余談:ウクライナの手数料要求

ウクライナでは現金でしか支払えない場所もあるのでATMで現地通貨フリヴニャ(UAH)を引出していたのですが、その手数料が凄まじかったんです。

1番酷かったのは手数料50%のATM。つまり、2,000UAH引出したいなら手数料1,000UAHも勝手に追加されます。

また、50%とはいかなくても手数料10%や30%とかは普通にあったし、希望金額の出金ができず「150UAHまでしか引出せない。でも手数料50UAHもかかるよ」というATMすらありました(銀行によって引出し可能額や手数料が全然違う)。そのため、手数料を抑えるためなのか1人の利用者が長い時間をかけて何度も何度も現金引き出しを繰り返している姿を目にしたこともあります。

空港チェックインの手数料はウクライナの航空会社「SkyUp」が運航するウクライナ→アルメニアの航空券で発生しました。「空港到着までにオンラインチェックインを済ませていない場合は21USDの手数料が発生する」というものです。

航空券予約時にその注意書きを見落としていた私の完全なミスだったので文句は言えないのですが、「なぜそこまで高額な手数料を乗せるんだ」とは少し思いました。まるで乗客側が注意書きを見落とすことを狙ってそれを使って小金を稼ごうとしているようにすら感じました。

そのため、その便のチェックインカウンターに並んでいた他の乗客達も私と一緒にぞろぞろと手数料支払いカウンターにも並ぶことになりました。あれは相当な金額を稼げると思う。
でも、この時の便が2時間半遅れで飛ぶことになったために「次回予約時に15%OFFになるクーポン」をくれたからまあいいかな。
果たしてこの1年以内にまたウクライナに行くかは不明だけど。

ただ、これよりもアイルランドのLCC航空会社「Ryanair(ライアンエアー)」の方がはるかにヤバいらしいことを今回初めて知った。そのLCCでは事前にオンラインチェックインをしていないと55ユーロ(約7,000円)の罰金を取られる上に、入国を保証できるビザチェックも済ませておく必要があるそうです。
気になる人は「ライアンエアー」と検索するだけで沢山の被害者の声や注意喚起を見つけることができるよ。

私はそんなに多くの国に行ったことがあるわけでないので比較対象も少ないのですが、色々な場所においてあんなに異常な高さの手数料をとられた国はウクライナが初めてでした。また、それ以外では社会や人々の雰囲気も暗めで閉鎖的だったこともあり、正直なところわずか4日間という滞在期間のうちにウクライナ社会への不信感や失望感という負の印象が芽生えました。
経済崩壊して貧困にあえぐウクライナにとってはそういう細かい方法をとってでも少しでも稼ぎたいのかも、とすら思ってしまったほどです。私の考えすぎかもしれんけど。

DILAの結果を送っても何の連絡もない

DILA公式サイト
1番下にあるリンクからフォーム送信できる

研究機関の係の人に「DILAの公式サイトから結果を報告したらVdomaアプリを止められる」と教えてもらったので指定のフォームから結果を何度か送ったものの、何も連絡は来ずアプリは一向に止まりませんでした。
→DILAの公式サイト:https://dila.ua/

アプリに登録した電話番号と個人を紐付けているようなのですが、陰性結果のデータが紙で管理されていて目視確認でもしているのか、もしくは陰性結果の送信フォームの情報を手動で管理しているのか、何らかのせいでアプリとすぐに連動されていないんじゃないかと思いました。
非効率的ですよね。スマホアプリ経由でならオンライン上に個人情報をデータで記録できるだろうに、その利便性を活かせてない気がしました。

厳しい条件下で働く制作担当者への個人的な同情

ワクチン接種後14日が経った上に陰性結果も出たので、その日以降は外出時はデータ通信をOFFにして「Vdoma」アプリからの顔写真送信通知が来ないようにし、その翌日にはアプリ自体を強制停止しました。顔写真送信を無視していると「ルール違反です!」と通知が来たり、アプリを強制停止する際も警告が出ますが停止したところで別に電話もSMSも何も来ません。

問い合わせ可能なメッセージアプリはViber、Telegram、Messengerの3つだったのでViberから何度か問い合わせしてみても「ごめん、私達数百件のお問い合わせを処理してるからすぐに返信できない!」という自動応答が返ってきただけだったので、恐らくアプリの問い合わせ担当者達がてんやわんやになり、何もかもの対応が雪崩式に遅れてしまっているんじゃないかと思いました。
※東側諸国ではWhatsAppよりもViberの方が主流の雰囲気。

私は退職するまでWeb制作会社で働いていたこともあり不具合対応の厄介さは身に染みています。
サイト制作もアプリ制作もリリースまでの大体の流れは似たようなものだと思うので、「Vdoma」のように不具合が多いアプリはリリース後のバグ対応や問い合わせ対応が大変そうだなと制作者に若干同情もしました。しかもこの「Vdoma」みたいにリリース後すぐに何千人、何万人規模の人が利用する場合はその不具合の十分な修正期間や検証期間すら無いので尚更。

恐らく同じような問い合わせも殺到してるだろうし、中には一刻を争うような緊急度の高い問い合わせも含まれているかもしれないし、問い合わせ内容の取捨選択にも時間がかかってそう。

Web制作のことも絡めてちょっと書くと、何か一つのサイトを作成する際、最初から有能なエンジニアに作ってもらった場合は検証時で見つかる不具合や修正箇所も少なく済むので全体の工数は比較的少なくなります(しかも作業も速いし無駄なソースコード記述も無いので全体的に効率がいい)。
※検証:PC(Chrome、Firefox、Edge、IE11、MacOSなどの各種対応環境)やスマホ(android、iOS各種。バージョン別に確認する時もある)、タブレットから実際にアクセスしてみてそこで変な動きをしてないか、リンクから正しく遷移できるか、pxや余白がずれてないかなどの表示や動作確認をしたり、フォーム入力や送信・受信確認などをする作業のこと。

でも、有能なエンジニアを動かすには当然それなりの対価が発生します。受注金額が安い場合は工数金額をオーバーしてしまう(赤字になる)のでそういうエンジニアに関わってもらうことができません。

そのため代わりに多少レベルの低いエンジニアに頼まざるを得なくなるのですが、その場合は残念ながら修正箇所も増えることになるので検証→修正→再検証…という工程も増え、結果的に制作関係者全員が疲弊しがち。
最悪なパターンは「予算も安い上に製作期間もギリギリの超短期」条件で依頼してくるタイプかな。中小企業のおっさんに多く、こういう相手に限ってWebサイトの知識が無い上に色々口出ししてくるので余計に厄介だった。

ウクライナの「Vdoma」がどんな条件で作成されたのかは不明ですが、「少ない予算・短納期」でバタバタと作ることになった結果なら関係者達はきつかったと思うので個人的には許せるかも。入国時に何個ものアプリをインストールさせて無駄な時間をとらせる日本よりはるかにマシだと思う。

ウクライナ政府が作ったものとはいえ、日本の官公庁や大企業のサイトだって自社の利益UPのために安い金額で外部委託する子請け・孫請けは公然と行われており、そのせいで実際に制作する最下層の制作会社の人間は非常に厳しい条件で働いていたりするので(私自身もその経験ある)、個人的には「政府制作なら信用できる!」とは言えないと思いますね。

例えば最近なら東京五輪ボランティア募集サイトのひどさが記憶に新しいかも。
ただ、日本のサイトは古い体質が残っている企業や官公庁・役所ほど上層部がWeb・デジタル技術に無知すぎて変な要望を出すことが多く、使いにくい(見にくい)サイトが多い気がするので東京五輪のあのサイトも別に驚くことでもないかな、とも思う(上層部よりも若い社員の意見や要望の方がはるかに的確で有意義)。
そのせいか、UI・UXだけでなくデザインも整えられた欧米圏のWebサイトを日常的に使っていると日本語サイトを見るだけで疲労感がすごい。

終わりに

ウクライナを発つ日に空港であのアプリをアンインストールしましたが、1週間以上経った今に至るまで何の連絡も入ってきていません。そういうことを把握できないほど内部は今頃滅茶苦茶なのかもしれん。それとも、DILAから送った陰性結果で知らない間にOKになっていたのか…
連絡が無いので真相は不明。

今回のことは入国時にワクチン接種後14日経っていたら経験しなくてよかったことだったものの、「不便なアプリに苦しめられる」という経験ができたおかげで私の中にその免疫ができて、今度同じような目に遭った際はその免疫が私の感じる症状(苛立ち)を軽減してくれることだと思います。

なので、今回のウクライナの「Vdoma」アプリはある意味私にとっての「ワクチン接種」だったんですな。
ちゃんちゃん。

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