首都エレバンの中心地「共和国広場」のすぐ近くで開かれている屋外マーケットにはアルメニアの伝統工芸品を中心に様々な商品やお土産が並んでいます。出店している店は軽く200店は超えるのではと思うくらい店が多いので、フラフラと眺めて回るだけでも楽しいです。
アルメニアの伝統工芸品屋外マーケット「Vernissage」について

フランス語で「プライベート展覧会(一般公開前に限られた招待客のみ鑑賞できたプレ展覧会のようなもの)」を意味する”vernissage”に由来しているそうです。
余談
かつてのロシア語にはフランス語由来の単語や表現が多く組み込まれていたためか、アルメニアでもブルガリアでも「Thank you」という意味で「Merci」がよく使われています。そのため、この「vernissage」というフランス語もその当時の名残なのかな、と思いました。素人なので真相は不明ですが…
1980年代頃からエレバン市内の芸術家達が街のあちこちで自らの芸術作品を展示し始め、次第にその規模が大きくなっていったために最終的に現在の場所に移ったそうです。マーケットは全長350mもあり、4~5列くらいの間隔で店舗がひしめき合っています。
アルメニアでは普段から一般の人々がそこら辺の地面にシートを広げて服を売っていたり、ベンチに腰掛けて野菜や果物を売っていたり、自家用車のトランクに大量のスイカを載せてその場で売っていたりと個人が自由に商売をしているようなのですが、ヴェルニサージュではどの店も出店位置がほぼ毎回同じだったので事前登録制なのかもしれません。



マーケットは春~秋にかけて土日の10:00~18:00を中心に開かれています。
冬は寒さが厳しいので店舗数も少ないそうです。一応平日も店を出している人はいましたが、閑散としていたので思いっきりマーケットの雰囲気を楽しみたい場合は晴れた土日に訪れるといいかもしれません。支払いは基本的に現金なので、近くのATMで10,000AMDくらい(約2,000円)引出していると便利。
※アルメニアの夏はほぼ雨が降らず毎日快晴が続くため、もし夏に訪れる場合は悪天候のことはあまり心配しなくていいと思います。ごく稀に夕立が降るくらい。


アルメニアの伝統工芸品屋外マーケット「Vernissage」で売られている代表的な物

もともと伝統工芸品を売る場所だったためか、アルメニアの伝統的な手作りバッグや帽子、テーブルクロスや絨毯、寄木細工、銀製品のアクセサリーなどが数多く並んでいます。
特にアクセサリーはかなり多く、銀製のピアスやネックレスを中心に天然石や木製の素材なども売られています。正式なアクセサリー制作資格保有者の場合はその免許が机上に置かれているので、そういう店の製品は品質も保証されていると思います。
伝統工芸品以外では古本や旧貨幣、食器類、Tシャツ、チェス盤などが売られています。特に、アルメニア文字をデザインに利用したストールやTシャツは種類が豊富です。

画像引用元:Armenian alphabet




ファストフード店でもこの道具を使って炭火で肉を焼いている


魅力的過ぎる抽象画に思わず見入っていると「わしが描いたんだよ」とカップコーヒー片手におじいさんが声をかけてきました。1番小さいサイズのものは各15,000AMD(約3,000円)だそうです。


また、アルメニアはザクロが象徴的イメージらしく、建物の装飾やTシャツの模様、絵画の中でもよく目にしました。そのため、マーケットにはザクロに関する商品が多く並んでいます。


余談1:商品の見せ方がかなり上手いアルメニアの人々
アルメニアで普段過ごしていて驚くのは商品の陳列のこだわりようです。このマーケットでもそうなのですが、人々は自分の店の商品をよりよく見せるために敷物を敷いたりバランスよく並べ替えたりと余念がありません。
そして、これはスーパーマーケットの陳列や個人の八百屋でも強く感じます。
「一体どれだけ集中したんや…」と思うくらいぴっちりと並んだお菓子の山、ずれたりせずに並んでいるジュース(しかも、必ずラベルが表を向いている)、綺麗に重ねられた野菜や果物、売り物の果物を見栄え良くするために敢えて一緒に並べている果物の葉っぱなど、どこに行っても陳列の一つ一つに明らかに手が込んでいるんです。
正直、こんなに見せ方が上手い国は初めてなので毎回驚きます。



余談2:普通に目にするソ連の名残

また、アルメニアは以前は旧ソ連圏だったためか「CCCP」という文言や鎌と槌マークの付いた紋章やメダル、バッジや硬貨などもマーケットのあちこちで商品として並べられています(中高年男性が熱心に眺めているのをよく目にした)。
「CCCP」や「RUSSIA」とデカデカと書かれたTシャツや帽子なども売られていました。
※CCCP:ソビエト社会主義共和国連邦(略称:ソ連)という意味のロシア語(Союз Советских Социалистических Республик)の頭文字。
あと、スーパーマーケットでアルメニア産の「CCCP」アイスクリームが平然と売られていたりするので初めて見た時は「えっ、これOKなん?!」とびっくりした。強すぎる名前とは裏腹にアイス自体は普通のチョコがけバニラ棒アイスです。

アルメニアの屋外マーケット「Vernissage」で気に入ったアクセサリー

ヴェルニサージュでは銀製のピアスや指輪などがたくさん売られています。また、銀以外でも木製や革製のアクセサリーも多く目にしますね。
個人的に気に入ったアクセサリーがあったので以下のピアスを購入しました。
1.GlassWood

7,000AMD(約1,400円)
アプリコットやクルミなどの天然木材を組み合わせた手作りアクセサリーを販売しているショップです。ピアス以外にネックレスや指輪なども売っていました。
このショップの販売者は女性でしたが、彼女のお兄さん(もしくは弟)が制作しているそうです。

ショップの公式Instagramはこちら。
2.HARUTYUNYAN SILVER HANDMADE

各12,000AMD(約2,400円)
伝統手工芸の制作資格証明書を持つ店主の男性が手作りしている銀製のアクセサリーです。他にも腕輪や指輪が売られていました。

ショップの公式Instagramはこちら。
おまけ:日常でよく使うアルメニア語
マーケットにはお土産を買いに来る外国人観光客も多いためか英単語などでコミュニケーションできる人が多いです。ただ、中にはアルメニア語もしくはロシア語しか話さない人もいるので、簡単なアルメニア語を知っているとよりローカル感を味わえるかもしれません。
- はい:ハー(もしくは、アヨ)
- いいえ:チェー
- 気軽な”こんにちは” / “やあ”:バーレフ
- より丁寧な”こんにちは”(接客や初対面の人は大体こっち):バーレフ ゼス
- 元気?:イーンチ ペセク?(丁寧)/ラヴ エク?/ヴォンツェス?(カジュアル)
→「I’m fine」という返答は「ラヴ、メルシー」でOK。相手に聞き返す時は「ドゥーク イーンチ ペセク?」が丁寧です(ドゥーク:youの丁寧な言い方)。 - 良いね:ラヴ(英語の「Love」の発音と近い)
→「めっちゃ良いね」なら「シャット ラヴ」 - これはいくらですか?:サ イーンチ アルジ?
→サ:英語の「This」、イーンチ:英語の「How」や「What」のような意味 - ありがとう:シュノラカルチュン(もしくはMerci:メルシー)
アルメニアにはロシア人観光客が多く、中高年の人々にはロシア語が通じるので若いロシア人観光客達の中にはロシア語でやり取りしている人も多いです。欧米圏の観光客は躊躇わずに英語ですが。
ただ、個人的には現地の母国語でのコミュニケーションって大事だと思うので私はなるべくアルメニア語を使うようにしています。
外国人の私がアルメニア語を一言でも発すると地元の人々はこちらへの警戒心を一気に解いて喜んでくれますね(これはブルガリアでも同じことだった)。
余談:チェスにおけるアルメニアの活躍ぶり

アルメニアはチェスが強いことが有名らしく、2011年から小学校ではチェスが必修科目になっているそうです。そのためかチェス盤を売っている店をヴェルニサージュ以外でも街やショッピングモールのあちこちで目にしました。「チェスを義務教育化したアルメニアはその後どうなったのか」記事でアルメニアでのチェス教育への力の入れようやチェス教育のメリット、チェス選手の人気ぶりなどが解説されています。
Wikiによるとチェスの世界チャンピオン(グランドマスター)は戦後は特に旧ソ連出身者の独壇場のようです。アルメニアは今まで37人のグランドマスターを輩出しています。
ただ、アルメニア人は20世紀前半のアルメニア人虐殺を受けてアルメニア国内よりも国外で暮らす離散民「アルメニア・ディアスポラ」の方が多いことで有名な民族なので(現在アルメニア人の2/3はアルメニア以外の国で生活している)、ロシアやウズベキスタンという国名ではなく「アルメニア人」という民族で分類した場合はグランドマスターの数がもっと多くなるそうです。
※詳細:Wikiの「Chess in Armenia」のArmenian diaspora項目、「Armenian diaspora」
「【2020年最新版】世界のチェスのレートランキング【最強のグランドマスター達】」ページによると現在世界第7位にアルメニア人チェスプレーヤー:レボン・アロニアン
がランクインしています。
また、1924年以降2年毎に開催されているチェスの世界大会「チェスオリンピアード」の存在を今回初めて知りました。ここでも戦後はソ連とロシアが圧倒的な強さを見せています。ただ、アルメニアも何度もメダルを獲得している強豪国の一つのようです。
アルメニアチェス協会を設立したSerzh Sargsyanは「人々がアルメニアという国に対して抱くイメージは地震や虐殺ではなく”チェスで有名な国”であってほしい」と述べていたそうなので、アルメニアがチェスに委ねたのは母国の誇りの復活もあったのでは、と思います。
※詳細:Wikiの「Chess in Armenia」4. Institutions
アルメニアの教育ではチェス以外には数学や物理にも力を入れているらしく、科学技術に力を入れていた旧ソ連時代の教育の名残なのかもしれません。

エレバン市内中心部にも野外チェス盤がありました。誰かが遊んだ後はまた誰かが最初の定位置に並び直しているのか、日によって駒が揃っていたりバラバラだったりと色々でした。


終わりに
ヴェルニサージュはウィンドウショッピングだけでも楽しいので何度も足を運びました。
アルメニアならではのお土産を買えるだけでなく地元の人々の姿も見れるので好きな場所です。アルメニアに訪れた際はぜひ。