HOME > Abroad > ブルガリアにあるローマ帝国時代の圧巻の遺跡

ブルガリアにあるローマ帝国時代の圧巻の遺跡

hisaryaの門

古代史で燦然と輝くローマ文明は現代の地中海周辺からヨーロッパ圏に至るまで掌握した最強帝国の一つです。ブルガリアもかつてはローマ帝国領土にあったので、ローマ帝国の遺跡が数多く残っています。実際に行ってみて圧巻だった遺跡をご紹介します。

はじめに

私自身「ブルガリアに行こう」と決めて来たものの、まさかブルガリア国内にこんなにもローマ帝国時代の遺跡が残っているとは思ってもみませんでした。ブルガリアと言えば「ヨーロッパ」から連想される石畳や石造りの町並み、ヨーグルト…ぐらいの雑なイメージしかなかったんです。

ただ、どうせブルガリアに3ヶ月間滞在するなら、とあちこち巡っているうちにブルガリアはトラキア文明、ローマ帝国、オスマン帝国という世界史の有名所が大きく関わっていたことを知りました。特にローマ帝国時代の遺跡は状態が良い上に至近距離で見れるので、古代史好きな人には嬉しい場所かもしれません。

この記事で紹介する遺跡の一覧

ブルガリアのローマ帝国遺跡①「Hisarya(ヒサリャ)」

Plovdiv(プロブディフ)から電車で1時間ほどで着く小さな町「Hisarya」(ブルガリア語:Хисаря)。もともとアラビア語で「砦」を意味する「Hisar」が語源です。
温泉が湧き出ることから、ローマ帝国時代は戦士の湯治目的の場所として整備されたようです。

この町の素晴らしい点は、なんと言ってもローマ帝国時代に一つの町を囲っていた壁がその町の名前の通りにほとんどそのままの姿で現存していることです。「Roman Thermal Spas of Europe」によると、Hisaryaの町の砦は全長2,327m、高さは最大11mもあり、ヨーロッパで最も保存状態が良いものだそうです。

門をくぐる人がいると、門の高さが際立つ

特にこの門の遺跡は2頭のラクダが向かい合って見えるので通称「Camels」と呼ばれているそうです。かつては騎馬や戦士が通っていたであろう道も、今は車や歩行者がくぐっていきます。

門は中身に階段と小窓があるので、そこから通行人や侵入者を監視していたのかもしれません。

門の中に設けられた空間

この門から町を囲むようにぐるっと石壁が続き、門以外の場所からは簡単に町に侵入させないようにしていたことがよく分かります。

壁の外側から見た様子。このような壁が延々と続く
壁の内側から見た様子
壁の割れ目が住宅街への入り口
当時の壁の再現図。「Camels」は5番に位置します

「ローマ帝国時代の遺跡」と言えば凄まじい歴史的価値があると思うのですが、Hisaryaの町の遺跡は立入禁止にされることもなく普通に開放されているので人々は勝手に遺跡の中にショートカットコースを作ったりしていました。

住宅街の隣にそのまま残っている遺跡
遺跡の中に勝手にできた道

完全な余談

ブルガリアは住宅街の芝生から山道まで、人々が勝手に作ったショートカットコースがかなり多いです。「何でここに?!」というものもあるけど、正直ショートカットコースの方が便利。

かつての町は現在では道路が舗装され、住宅街が並んでいます。ただ、考古学博物館があったり、公園にはローマ帝国時代の温泉施設の遺跡も残っていたりと、できる限り保存はされているようです。試しに温泉施設の蛇口から出ている水を触ってみたらお湯だったので、今も沸いているんだと思います。

公園にあるローマ帝国時代の温泉施設の遺跡

Wiki曰く2007年にEUに加盟したことで財政に余裕が生まれ、Hisaryaの町の遺跡の修復やインフラ整備を手掛けることができたらしいです。そのせいかHisaryaの町は他の地域の小規模な町とは異なり、かなり道路が綺麗だったんですよね。一般的にブルガリアの小さな町の道路や歩道はひび割れてまくっててボコボコなんですが…

Hisaryaの町の道路は首都Sofiaよりも綺麗だった

PlovdivといえばOld town内の円形野外劇場が有名なブルガリア第2の都市ですが、ちょっと足を延ばせばHisaryaにも寄れる良い街でしたね。このOld townも古代から近代にかけての遺跡や建物がたくさんある見どころの多い場所なのでそれはまた別の記事で。

Hisaryaへのアクセス

Plovdivの「Filipovo」駅から電車で片道1時間(3.05BGN)。「Khisar」駅で降車。
※HisaryaなのかKhisarなのか紛らわしいのですが、キリル文字に近い音は「Khisar」なのか、現地で切符を買ったり地図を開いたりする際は「Khisar」の音の方が便利でした。

ブルガリアのローマ帝国遺跡②「Ancient Theater of Philippopolis」

Plovdivで1番有名な場所といえばOld Townにある「Ancient Theater of Philippopolis」かもしれません。1世紀頃にローマ帝国によって作られた野外劇場で、当時は5,000~7,000人もの観客が入場できたヨーロッパでも最大規模の劇場の遺跡だそうです。入場料は2BGN。

火災や地震で4世紀頃には劇場の大部分が崩壊していたものの、1960年代後半頃に発掘され、その後は当時の建築方式を再現しながら大規模な修復が行われ現在の形になったようです。現在は最大3,500人が収容可能な野外劇場としてコンサートなどが行われているそうです。

Ancient Theater of Philippopolisの観客席から見た様子
石でできた観客席
ステージも意匠を凝らされている
舞台袖から見た様子
円形なので、必然的に観客の視線はステージに集中する仕様
劇場への当時の出入り口

Old Townは見どころが多いものの急勾配の山に作られた町なので、階段のような傾斜の石畳の坂道が延々と続きます。もし散策するのであれば歩きやすい靴の方がいいです。

ブルガリアのローマ帝国遺跡③「プロブディフの円形競技場」

Plovdivの中心街は歩行者天国の商業施設一帯が続くのですが、その開始地点にあるのがこの競技場の遺跡。2世紀頃に作られ、現在でも楕円形の競技場の出入り口部分がそのまま残っています。

階段状の観客席
すぐ目の前が商業施設一帯
当時の復元模型。楕円の入り口が現存している部分

この競技場は全長240m、幅50mもあり最大30,000人もの観客を収容できたらしいのでかなり巨大ですね。

ブルガリアのローマ帝国遺跡④「ローマの道」

上の競技場が終わる辺りにポーンとあるローマの道の遺跡。恐らく出土したまま残しているんだと思うのですが、あまりにもオープンなので地下通路を通るついでに普通にその道を歩くことができます。「全ての道はローマに通ず」を支えていた道の一つを2,000年後も歩けるんだから凄い。

Netflixで観た「ROMAN EMPIRE」によると、征服した土地で得た奴隷に道を作らせ、その道を使ってまた新たに領土拡大していっていたそうです。

野ざらしのローマの道
ここをローマ人が通っていたのか…

Plovdivのローマ帝国遺跡②③④へのアクセス

Plovdivはあちこちに遺跡があるので歩いていて楽しいです。円形野外劇場はGoogle mapだとトンネルの上にあるので一瞬どうやって行けばいいのか戸惑うのですが、それはOld Town一帯が山の上にあるためです。

ブルガリアのローマ帝国遺跡⑤「Roman Thermae」

4つ目は黒海沿岸にあるブルガリア第3の都市Varna(ヴァルナ)から。圧巻レベルとしてはHisaryaに次ぐかもしれません。

余談

黒海沿岸地域はVarnaに限らずどこも町に傾斜があります(特にBalchikがきつい)。夏にはブルガリア国内外からビーチに人々が押し寄せるリゾート地とは言え、この地域で市内を歩き回る際はスニーカーがあると便利だと思います。

Varna中心地から海に向かって坂を下っていった所にあるローマ帝国時代の公衆浴場「Roman Thermae」。注意してないと見落としそうになるくらいシンプルな入場口で、入場料は5BGNです。「Thermae」という文字を見た時は「これがテルマエ・ロマエか~!」と思いました。

Roman Thermaeの入場口

遺跡の中には当時の施設内観のイメージ図が各場所に貼られているので、遺跡の姿から想像することができます。下図は当時の復元イメージです。2世紀~3世紀前半に建造されたこの公衆浴場はヨーロッパで4番目に大きいローマ帝国の公衆浴場遺跡だそうです。

復元イメージだけでもローマ帝国がどれほど高度な建築技術を誇っていたか分かります。
温泉施設の周りには売店もあり、例えるなら現在の健康ランドのようです。

Roman Thermaeの復元イメージ
施設の簡略図。左右対称だったようです

まずは圧巻の入口部分から。復元イメージの左下の「N-W. Entrance」から入った部分に相当します。

とにかく巨大な入り口
温泉に来た人々がくぐっていたのであろう入り口
ここから色々な風呂場に行っていたようです
壁部分はどこも綺麗に残っています
載っかている岩の大きさから建物の壮大感が伝わってきます

浴槽部分はどれも円形なので、デザインのこだわりも感じます。
ふと思ったのですが、ブルガリアで目にした歴史的建造物は数枚の薄いレンガを重ねた上に今度は岩を数段積み重ねる、という建築方式が多かったです。ローマ帝国時代のものを受け継いでいたのかもしれません。

小さめの浴槽があった復元イメージ
上図部分。大理石の石柱が散乱しているので当時は内装も豪華だったんだと思います

この施設にはサウナもあり、当時は地下に火を灯した壺を大量に置き、熱を発生させていたようです。また、施設の外には複数のトイレも備わっていました。

こんなに立派な公衆浴場は維持費も相当かかったらしく、ローマ帝国が凋落していくにつれ次第に放棄されていきました。その後はこの公衆浴場の建築材はあちこち別の建物に使われ、一部はこれよりも小規模な温泉施設「Small Thermae of Odessos」に使われたりしたそうです。

Roman Thermaeの近くにあるSmall Thermae of Odessosの遺跡

Roman Thermaeへのアクセス

Varna駅周辺一帯は観光地が固まっているので散策しやすいです。

ブルガリアのローマ帝国遺跡⑥「Shumen Fortress」

場所は変わり、Shumenという小さな町の山頂にある砦の遺跡。入場料は4BGNです。山道なのでバスはなく、1時間半くらいかけて歩いていくしかないです。

当時の石造りの家の基礎がそのまま残っており、山頂にも関わらずここに数百人規模の集落があったことがよく分かります。3,000年前にトラキア人が定住した後はローマ帝国に支配され、その後はオスマン帝国やブルガリア人に支配されたりと、最終的に焼き討ちに遭うまでこの集落は1,400年頃まで機能していたらしいです。

厳密にはローマ帝国時代に建設された遺跡ではないですが、ローマ帝国時代の頃に作られた塀などは残っています。

砦の復元イメージ。二重の壁で集落を守っていたことが分かります
かつて建物があった場所の石の基礎が全て残っています
ローマ帝国時代の道
砦の見張り台。塔の階段で頂上まで行ける。壁や見張り台は近年復元されたもの
CGに見えますが、頂上から集落を実際に見渡した時の様子
一箇所が円形になっているBasilika(かつての裁判所や教会)。ブルガリアではBasilika遺跡をよく目にする
集落内は入り組んでいて迷路のよう

Shumen Fortressへのアクセス

Shumenの中心地から徒歩1時間半くらいひたすら曲がりくねった車道を登っていきます。Fortress敷地内に水やお菓子の自販機があるので頂上まで着けば休憩できます。

完全な余談

ブルガリアで数々のローマ帝国時代の遺跡を目にするにつれ、自分は壮麗な教会や寺院よりも「見よ、我が帝国の国力を!!」とガンガン知らしめてくるローマ帝国時代の巨大遺跡の方が好きなことに気付きました。そのため、ローマ文明自体にも興味が湧いたのでブルガリアにいながらNetflixで「ROMAN EMPIRE」を一気に鑑賞しました。(塩野七生のローマ帝国シリーズは15巻もあったので気軽に手を出せずにいる…)

Netflix「ROMAN EMPIRE」公式予告動画

現在全3シーズン。専門家の話も交えながら当時の様子を再現したドラマで非常に分かりやすいです。シーズン3はカリギュラ帝の話なのですが、暴君ネロの母アグリッパ(カリギュラの妹)が生来の野心家だったことがこのシーズンで描かれていて納得しました。

ローマ帝国時代の遺跡の場所がまとまっていたページ

ブルガリア以外にもかつてローマ帝国が名を馳せた地域には数多くの遺跡が残っています。以下がそれらを挙げてくれていたページです。いやあ~いつか行ってみたい。

  • 10 Incredible Roman Ruins
    有名所TOP10。コロッセウムからローマの水道橋以外にもチュニジアやクロアチアにある遺跡も名を連ねています。
  • 52 Ancient Roman Monuments
    52箇所もの遺跡を列挙!なのにブルガリアにある遺跡はゼロ!ということは、世界にはこれ以上のローマ帝国遺跡があるということ…恐るべしローマ帝国。
  • Roman Thermal Spas of Europe
    ローマ帝国時代から温泉地として有名な場所をまとめたサイト。ヨーロッパ圏の9箇所が紹介されています。ブルガリアのKyustendilという町も有名だったとは知りませんでした。Aboutページのサムネを見ると、どうやら1番Hisaryaを推してる感じ…

終わりに

ローマ帝国の偉大さを味わえて感無量。巨大な遺跡はまさに「百聞は一見に如かず」で、写真で見つけた時と実際に自分の目で見た時とでは受ける印象が大違いでした。1番気に入ったのはやはりHisaryaですね。

後悔したのは知識不足について。高校の時、世界史Bと日本史Bを選択していたのに「世界史Bの古代しか興味ねえぜ」とばかりに過激派だった私ですが、あれから10年も経つとせっかくの古代史の知識は跡形もなく雲散霧消していました。歴史的建造物を訪れる度、それに関する知識があればより一層楽しめるだろうになあ、とつくづく思います。

次にローマ帝国の遺跡を訪れるなら、もうちょっと知識を蓄えていたいものですな。そして一層圧倒されたい。

ローマ帝国に関する高評価書籍