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ブルガリアでソ連時代の生活を体感できる場所「The Red Flat」

ブルガリアのソ連時代体感ミュージアムの画像

ブルガリアのソフィア市内で見つけた興味深いミュージアムの一つが、1980年代のブルガリア一般家庭にタイムスリップできる体験型ハウス「The Red Flat」でした。このミュージアムでは社会主義一色の時代に人々がどのような生活を送っていたのかを目と耳で知ることができます。
社会主義というとどうしても暗い印象が強いのですが、市井の人々の目線で見た社会はまた異なっていました。

はじめに:「The Red Flat」について

ブルガリアはかつてはソ連の衛星国だったので社会主義時代を経験しています。このミュージアムでは1980年代の一般家庭の人々がどのように仕事や日々の暮らし、学校生活を送っていたのか、どんな余暇を過ごしていたのか、などを展示しています。入場料は18BGNです。

地図上に示された場所に行くとデザインショップのような場所に辿り着きます。「The Red Flat」に行きたい旨を伝えると、案内係の別の男性が来てくれました。
実際のミュージアムはそこからちょっと歩いた場所にある集合住宅の1室です。

一見普通のデザインショップに見えるものの、ここが受付
集合住宅内の1室全てがミュージアム

1980年代当時の雰囲気を残した部屋に当時の家具や書籍などがまるで今も誰かが暮らしているような生活感で配置されています。部屋にあるものは全て触っていいので、当時の新聞やアルバムを開いたりもできます。例えるならゲーム「どうぶつの森」で住民の家の引き出しとか好き勝手に開けていたような感じ。

案内係の男性から音声解説用のMP3を受け取り、その場所ごとに振られた番号に沿って音声を聞いていきます。音声は英語ですが訛りもなく聞き取りやすかったです。例えばラジオの場所では当時のラジオ音声とともに解説が流れます。

この家に暮らしているのは3人家族の設定で、それぞれの名前はマリア、マリアの夫プラム(?)、2人の息子であるブヤンです。夫は出張多めで家にあまりいない設定だったので解説音声の中でも影が薄く、正しい名前は忘れました(ごめんな夫)。

家の構造は玄関から入ってすぐにダイニングルームがあり、その隣にリビングルーム、扉を挟んで子供部屋、廊下の先にバスルームとキッチン、という1LDKです。当時としては標準的なサイズだったようです。

玄関。当時はここで靴を脱いでもらっていたようです
ダイニングルーム
当時のラジオや新聞、旅行パンフレットなど

社会主義時代とはいえ、東側の国には盛んに旅行に行けていたそうです。この一家はドイツにも旅行に行っていたようなのですが、恐らく東ドイツでしょうね。ただ、やはり西側の国に旅行に行くことは許されず、もし何らかの理由で行く場合は滞在の目的を厳しく聞かれていたそうです。

家財の一つ一つに一家の暮らしを感じさせるストーリーがあり、彼らの生活を感じることができます。例えば電話。当時は全世帯の電話番号が電話帳に載っていたそうです。ブヤンはテキトーにダイヤルを回して知らない人に電話を掛けるのを面白がっていたらしく、一度は母マリアの友人に掛けてしまったこともあるらしい。
マリアは出張で家を空けがちな夫からの電話を心待ちにしていたそうです。

ブヤンがいたずら電話していた電話機
リビングルーム

当時は田舎から都市に人口流入が起きていたために家が足りず、一軒家を手にするために何年も待っていた人もいたようです。この一家は幸い、標準的な家を手にできていました。

家に知人を招いて話に花を咲かせることが当時の人々の楽しみの一つだったそうです。ただ、娯楽はかなり制限されていました。東側で発行されていた本はどれも社会主義の色が濃く、楽しめるような本は少なかったので人々は西側の本を隠れて回覧していたようです。

TV番組も国営放送や民族音楽くらいしかチャンネルが無かったので、マリアとブヤンは時折放送される西側の「トムとジェリー」などを楽しみにしていたそうです。

ブヤンの部屋のベッド。やはりあった赤いスカーフ

息子ブヤンの部屋には音楽デッキやおもちゃ、当時流行った自転車などがありました。当時の学校生活の解説は興味深かったです。

例えば、当時の子供達は学業成績以外に社会主義や教師への態度などを常に監視されており、態度が悪いと矯正学校に送られたり栄誉ある社会主義団体に所属できなくなっていたこと、学校の行事として農場で一定期間農業に励むことなど。
また、英語やフランス語、ドイツ語なども学ぶことができたというのは意外でした。てっきりロシア語だけかと思っていたんです。

ブヤンの学習机。ノートなども実際に手に取れます

続いてはキッチンです。ブルガリア各地を転々としている私ですが、どのアパートでもゲストハウスでもキッチン設備はIHなのでガスコンロというものを全く目にしません。ブルガリアでは少なくとも1980年代頃にはIHコンロが一般的だったようです。

キッチン。洗濯機がキッチンにあるのも現代と同じ仕様
キッチンに散りばめられた小物はマリアの趣味なのか、かわいらしい
壁に貼られた1983年当時の布製カレンダー。日付が縦表記だったんですね

当時は電気の需要に対して供給が追いつかず頻繁に停電になっていたので、家の至る所にロウソクが用意されていたそうです。

キッチンテーブル上のロウソク
貯蔵庫には冬に備えた保存食品とレモネードがありました

当時はレモネードが人気だったそうです。「飲んでみる?」と聞かれたのですがちょっと遠慮しました。

終わりに

映画や本でしか知らなかったソ連時代の人々の生活を垣間見れてとても有意義でした。一般人の有給は年間2週間だったものの、警察のような国家役人系は1ヶ月間も有給があったことなどは「へえ~」と思いました。「人々はあらゆることで平等に」を目指していたにも関わらず国の中枢部と民間人には歴然とした生活格差があったことを感じさせます。

ただ、人々にはバカンスや旅行が推奨されていたものの西側からの思想や食べ物の持ち込みには厳しかったこと、子供の頃から国家に貢献するための人間教育がされていたことといった社会主義政権下の抑圧には随所随所で息苦しさを覚えました。
映画や本で知った当時の雰囲気は誇張ではなかったことを実感しました。そのような解説音声を一つ一つ再生していると合計で2時間くらいかかった気がします。

「The Red Flat」には今までは1日20人くらいの人が訪れていたものの、コロナ禍で観光客が来ない現在(2021/03当時)はせいぜい数人程度/日だと案内係の男性が話していました。
今は土日しか営業していないそうです。

ソ連政権下の社会主義時代の生活に興味がある方はぜひ。

「The Red Flat」へのアクセス

営業時間:10:30-19:30(最終案内18:00)※現在は土日のみ
入場料:18BGN
公式サイト:The Red Flat -Everyday life in communist Bulgaria-

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